寄稿(2)「富岡町小学校と千葉大学の交流について」/千葉大学と富岡小?中学校との歩み

富岡第一小学校長 八島 敬

富岡町を原発事故で避難した町内の幼稚園、小学校、中学校が三春町の工場跡地に再開したのは平成23年9月1日でした。4校2園に1,500人いた児童生徒が67人に激減してしまいましたが、何はともあれ学校が再開したということだけで児童生徒、保護者、教職員は大喜びでした。

工場跡地には広い野球場があり、校庭代わりに使わせていただいていました。しかし野球場にはバックネットがあるだけで子どもが遊べる施設がありませんでした。何とかブランコやジャングルジムを設置したいと思い、千葉大学の「卒業生との絆法老王宫殿娱乐场」に義援金を呼びかけて欲しいとお願いしたのが千葉大学との交流の始まりでした。

呼びかけ直後からものすごい反響があり、3ヶ月足らずで400万円の義援金が集まりました。また、卒業生のご尽力により遊具製造メーカーから遊具自体の寄付もあり、たくさんの遊具が設置できました。子供達は毎日昼休みになると我先にと校庭に走っていきます。やっと学校の賑やかさを取り戻したようでした。

その後、環境健康フィールド科学センター長の高垣美智子先生から「研究中の植物工場を寄付したい」という申し出がありました。三春町の工場跡地では放射線量が気になり、理科の植物栽培や観察は憚られていましたので、喜んで受けることにしました。子供達が自分で種をまき、成長の様子を観察し、収穫して食べるという一連の流れが居ながらにして体験でき大変重宝しています。現在は冬にもかかわらず、ミニひまわりが所狭しと咲き誇っています。卒業式にも会場を飾る予定です。

また、学生支援課長の菅野仁先生から「学生ボランティアの支援はいかがでしょう」という申し出がありました。子供達は富岡町での児童数から激減し、寂しい思いをしていましたので、学生さんと交流し、笑顔を取り戻せるのではないかと思い二つ返事で受けることにしました。豆まき集会、運動会、再開の集いなどで、楽しく交流し、避難生活の寂しさを吹き飛ばすひとときを過ごすことが出来ました。運動会や再開の集いでは少ない職員のお手伝いをしていただき、富岡町小中学校の先生方も大変助かりました。

その他にも子どものこころ発達研究センターの松本有貴先生からはファンフレンズという心の教育、大学院薬学研究院長の荒野泰先生には放射線教育の講義、環境健康フィールド科学センターの大塩貴寬先生には植物工場の授業と多くの支援をいただき、本校の職員が指導に不安を抱いていた分野に専門的な知識で対応して下さいました。

また、子供達が柏キャンパスの植物工場に招待され、初めて見る野菜工場のトマトやレタスに目を丸くして感動していたことが印象的でした。

このように千葉大学から数々の支援を受け、子供達だけでなく教職員も心から感謝しています。これらの支援はともすれば沈みがちになる私たちの気持ちを支えて下さいました。つらいときも誰かが支えてくれていると思うと勇気が湧き、夢と希望を持つことが出来ました。

子供達も千葉大学や全国の皆さんの温かい心に触れ、人間として大切なことをたくさん学んだことと思います。あの困難を乗り越えた子ども達ですから、これからは逞しく、力強く生きていけると思います。そして、大人になったとき、今回皆さんから教えていただいた感謝の心を、いろいろな場面で返してくれるものと信じています。