世界で最も孤立した雪氷圏?ハワイ島マウナケア山で雪氷藻類による「赤い雪」を発見 微生物の地球規模の分散と気候変動との関わりを示す

2025年10月01日

研究?産学連携

 山梨大学総合分析実験センターの瀬川高弘講師、千葉大学大学院理学研究院の竹内望教授、大阪工業大学工学部の松﨑令講師、広島大学大学院統合生命科学研究科の米澤隆弘教授らの国際研究チームは、世界で最も孤立した雪氷圏の一つであるハワイ島マウナケア山の山頂部の残雪に、北極や南極などの積雪上に繁殖する微生物である雪氷藻類注1)を確認しました。この藻類の大繁殖は雪を赤く染め、赤雪と呼ばれる現象を引き起こすことで知られています。遺伝子解析の結果、今回発見された雪氷藻類には、約25万年前に他地域の集団から分かれて独自に進化してきたハワイ島固有の系統群と、世界各地に分布する広域分布系統の二つのグループが含まれることが判明しました。本成果は、雪氷環境に適応した微生物が長期的な気候変動を通じて世界規模で分散し、各地域で固有種へ進化することを明らかにしました。温暖化が進む現在において、雪氷上の希少な生態系とその遺伝的多様性を保全することの重要性を示しています。

??用語説明
注1)雪氷藻類:雪や氷の上で繁殖する藻類の仲間で、寒冷環境に適応した特殊な光合成微生物。細胞内にアスタキサンチンなどの赤い色素を蓄積し、強い紫外線から身を守る。高密度で繁殖すると雪が赤く見える「赤雪」現象を引き起こす。残雪の消失といった生息環境の悪化に対応して厚膜胞子を形成し、環境が改善するまで休眠する。

  • 図1:マウナケア山における積雪の写真
    左図:2021年1月21日、右図:2021年3月26日