令和7年度千葉大学大学院入学式 学長告辞(和訳)

秋の光がやわらぎ、澄んだ気配がキャンパスの木立を透かす季節となりました。千葉大学大学院に入学された修士課程、博士課程、専門職学位課程の皆さん、入学おめでとうございます。ご家族や関係者の皆さまにも、心よりお祝いを申し上げます。

皆さんは、学部や社会での経験を経て、新たに研究を始めたい、研究をさらに深めたい、あるいは高度な技術を身に付けたいという思いから、本日の入学を決意されたものと思います。向学心と探求心に満ちた皆さんをお迎えできることを大変うれしく、誇りに思います。教職員一同、その夢の実現に向けて全力で支援してまいります。

研究の種は、研究者の数だけ多様に存在します。私たちが「当たり前」と思い込んでいる事実の奥には、なお多くの未知が潜んでいます。大学院での年月を通じて、自らの興味と志に根ざし、取り組みたい研究や究めたい学問領域を存分に探究してください。

千葉大学は、戦後に新制国立大学として誕生し、今年で創立76年を迎えました。昨年度に新設された「情報?データサイエンス学部?大学院情報?データサイエンス学府」を含む11学部、9つの大学院を擁する総合大学として、「つねに、より高きものをめざして」を理念に、学修?教育?研究に邁進しています。皆さんには専門性をとことん追求するとともに、学部?研究科の枠を越えた学際的交流によって視野を広げ、人生を豊かにしていただきたいと願います。

いま日本は、少子高齢化と人口減少、頻発?多様化する自然災害、国際秩序の緊張、環境?エネルギー?気候の課題など、複雑で困難な現実に直面しています。こうした時代にあって、大学院は、課題を解決し日本の未来を切り拓く人材を育成する場として、かつてない重みを帯びています。求められる大学院像は、単に専門知を深めるだけでなく、知の統合と創造を通じて未来社会の在り方を示し、新しい価値を生み出す拠点といえます。

本学は今年度、新たな大学ビジョン、「生命、環境、そして社会へ。知の共鳴で未来を拓く千葉大学」を掲げました。このビジョンは特定分野に限られるものではなく、本学が培ってきた多様な学問を響き合わせ、「生命」「環境」「社会」の三つの柱を通じて知を深め、連鎖的に価値を創出することをめざすものです。皆さん一人ひとりの研究や学びが、この「知の共鳴」の源となります。

あわせて本学は、大学と社会のつながりを一層強固にし、起業家精神を育むため、アントレプレナーシップセンターを設置し、株式会社千葉大学コネクトを設立しました。法老王宫殿娱乐场にはオープンイノベーション拠点 Biohealth Open Innovation Hub(BIH) を新設し、産業界?自治体?研究機関と連携した共同研究や社会実装の取り組みを進めています。皆さんも、ぜひこれらの環境をご活用ください。

ここで、これから歩み始める皆さんに、ぜひ意識してほしい3点をお伝えします。
第一に、 専門性を深めるとともに、他分野との対話を恐れず、学際的な視野を持つこと。複雑な課題の解決には、分野横断の知恵の結集が不可欠です。
第二に、 国際的な視野と発信力を高めるとともに、常に社会を意識すること。理論の探究にとどまらず、実社会の課題解決へと橋を架ける力を養いつつ、多様な価値観を理解し、国際舞台においても、語り、行動できる力を磨いてください。
そして、第三に、 研究者としての高い倫理観と誠実さを持ち続けること。研究は自由であると同時に、その影響は社会全体に及びます。責任ある姿勢で知を探求してください。

大学院生である皆さんは、学生であると同時に、研究最前線の一翼を担う若手研究者です。本学は、皆さんが学修と研究に専念できるよう、経済的支援や研究環境の整備を進めています。卓越大学院プログラムや、全方位?挑戦的融合イノベーター博士人材養成プロジェクトなど、多面的な支援を毎年200名以上の大学院生に提供しています。どうか積極的に活用し、自らの可能性を最大限に引き出してください。千葉大学は、皆さんの挑戦を心から歓迎し、サポートし続けます。

千葉大学大学院における皆さんの活躍を心より期待し、本日の告辞といたします。
ご入学、誠におめでとうございます。

令和7年10月1日

千葉大学長 横手幸太郎