令和6年度千葉大学学部卒業式?大学院修了式?学位記授与式  学長告辞

素晴らしい青空、若葉の芽吹き、桜のつぼみに春の訪れを感じる、この佳き日に、千葉大学の学士、専門職、修士、そして博士の学位を授与される皆さん、誠におめでとうございます。教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。ここに至るまでの努力と成長を称えるとともに、長きにわたり支えてこられたご家族や関係者の皆様に、深く敬意を表し、謹んでお慶びを申し上げます。

千葉大学は、「つねに、より高きものをめざして」の理念を掲げ、高度な専門知識と倫理観をもとに、自ら考え、行動し、グローバルに活躍できる人材の育成を目指しています。卒業生、修了生の皆さんは、これまで勉学に励み、ご自身の専門性を磨き、課外活動や友人との交流などを通じて、人間的にも大きく成長されたことでしょう。

卒業生?修了生の皆さんにとっては、2020年4月に本学が始めた「グローバル人材育成ENGINEプラン」の柱の一つ、「全員留学」も新しい挑戦であったと思います。当初はコロナ禍のため、オンラインでしたが、2022年度は1182名、23年度は2215名、そして24年度は約2800名と、多くの皆さんが現地留学を体験されました。実際に海外で生活した方はもちろん、状況に応じてオンライン留学を活用された方も、これを機に異なる価値観に触れ、あるいはその中に身を置き、現地の人々とともに学ぶことができたことは、大きな財産になったのではないかと思います。これからもぜひ、挑戦を続けて、自らの世界を広げていってほしいと願います。

さて、皆さんがこれから生きていく社会とは、どんな社会なのでしょう。日本は少子高齢化、人口減少が加速度的に進み、対策が急務となっています。豪雨災害や地震など、生命や暮らしを脅かす自然災害も頻発しています。世界に目を向けると、ウクライナやガザ地区などでの紛争、環境破壊、気候変動、そしてエネルギー問題と、その影響は、原油高や物価高騰のような形で、私たちの生活を直撃し、地球規模での解決が求められています。こうした世界情勢は、今から100年前、第一次世界大戦と第二次大戦の間の時期とよく似ているという指摘もあります。私たちが日々享受している平和が、決して当たり前ではないことを認識しなければなりません。

しかし、これらの問題を前にして、「個人の力は無力である」と悲観する必要はありません。むしろ、一人ひとりの行動こそが、変化を生み出す原動力です。千葉大学で培った知識、経験、そして思考力を活かし、目の前の課題に一つひとつ向き合い、周りの人たちとよく話し合い、解決へと導いていきましょう。未来を創るのは皆さんです。新たな一歩を恐れず、踏み出してください。皆さんが行動すれば、周りも動き、それがやがて社会全体の進歩につながっていくのだと思います。

今から50年前、私が子どもの頃には「人口が増え続けて食料が足りなくなる」とまことしやかに語られていました。今の状況とは対照的な予測です。また、公害による大気汚染や河川の汚染が深刻化し、衛生環境も決して良好とは言えませんでした。このようにいつの時代にも課題はありますが、私たち人間は、英知を集結し、真摯に向き合うことで、それらを解決しうるのだと、私は信じたいです。皆さんもそう思いませんか?

人間の英知といえば、2024年の法老王宫殿娱乐场の中で、私にとって最も印象深かったのは、ノーベル物理学賞と化学賞の両方が人工知能(AI)の研究に授与されたことです。?120年以上にわたるノーベル賞の歴史の中でAI研究の受賞は初めてであり、まさに新時代の幕開けを告げる出来事だったと思います。

?少子高齢化をはじめとする社会課題に対し、政策や社会変革による解決も重要ですが、AIやロボティクス、デジタル技術の発展により、これまでとは異なる形での解決策が生まれる可能性があります。つまり、課題の中にこそ、新たな研究の種やビジネスチャンスが隠れているのです。

ここで、私自身が課題に直面した際、心がけてきたことを共有したいと思います。それは、できるだけ多くの「良質な情報」を集め、それに基づいてよく考え、決断をするというプロセスです。今は、インターネットを含め、情報が氾濫していますが、そのすべてが正しい訳ではありません。

私は2020年4月、法老王宫殿娱乐场のパンデミックで世の中が大混乱していたときに、千葉大学附属病院の病院長に就任しました。ウイルスの正体も対処法もよく分からない中で、患者さんと職員を守っていくために、日々の意思決定を行う立場となりました。その際に、何よりも重要だったのが、「良質な情報」を集めること。毎日、現場から上がってくるデータを見て、専門家の意見を聞き、さらに信頼性の高い科学論文などの知見も参考にして、日々の意思決定をできるだけ迅速に行っていきました。

皆さんも、これからの人生でさまざまな選択を迫られる場面があるでしょう。そのときは、一つの意見に流されるのではなく、複数の情報源に当たり、専門家の見解を参考にし、慎重に見極める姿勢を大切にしてほしいと思います。

最後に。

皆さんの前には、無限の可能性が広がっています。これまで千葉大学で学んだことを土台に、社会に貢献し、一度しかない人生を悔いなく歩み、豊かなものにしてください。
私たち千葉大学は、これからも皆さんにとって誇れる存在であり続けることをお約束します。

As you step into the next chapter of your lives, remember that the knowledge, experiences, and values you have gained at Chiba University will serve as your foundation. The world is filled with challenges, but it is also full of possibilities for those who are willing to take action. Approach each challenge with an open mind, seek reliable information, and collaborate with others to create meaningful change. Your actions, no matter how small, have the power to shape the future. Congratulations on your graduation, and may your journey ahead be fulfilling and impactful.

改めまして、皆さん、本日はご卒業、そして学位の取得、誠におめでとうございます。

令和7年3月23日
千葉大学長 横手幸太郎